2014年6月 のアーカイブ

尾野秋奈第一句集『春夏秋冬』 2014年5月   ふらんす堂

2014年6月4日 水曜日

11996年結社「童子」から始まって現在「大」・「船団」所属。
序文を坪内稔典氏が、まるで高校生の同級生同士のような距離で書いている。
そうして坪内氏が帯文で紹介しているのが、やはりあんぱんの句だ。

あんぱんのへそずれてゐる12月

新書版タイプのソフトカバーは手にやさしい。表紙絵もタイトルごとにおかれた水彩画も人柄、いや俳柄というか俳句の空気と通っている感じだった。

魚は氷におもちやのやうな中国語
ほのぼのと鶯餅の指のあと
見えてきて尾の先までも蛇であり
旅にしてわれら昼寝を楽しめり
手袋に夫のかがりし穴ひとつ

比喩が独特である。中国語が玩具のようだという。言われてみれば頷いてしまう。鶯餅への対象の迫り方。、そうして旅で昼寝という措辞になるのも、この作者の生き方なのだ。
最後の手袋の穴、それも夫自身がかがったこも特別なことではないのだ。

12月8日ペコンと凹むアルミ鍋

作者のすべての要素の凝縮がこの一句にはある。

大竹多可志句集 『芭蕉の背中』2014年3月  東京四季出版

2014年6月4日 水曜日

若水をごくごく飲んで外に出る
春浅し作務衣の僧が下駄鳴らす
野牡丹の花散る音を聞き留むる
長身の女が落葉踏みて去る
耳遠き振りをしてをり八重桜
手の中にまたもジョーカー冬の夜

奥の細道を自転車で廻ったりして活動的な俳句作家である。それが、(若水をごくごく飲んで外に出る)の明るさに繋がる。
行動的な感性と音への感覚が野牡丹の花散る音を聞き、女が踏みゆく落葉の音を感じていて物語的な要素が加わっている。

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