2010年12月18日 のアーカイブ

『NHK俳句』1月号

2010年12月18日 土曜日

1月9日・1月11日放送 「子供の情景」 筆者・西村和子

   子離れや土筆のはかま陽に焦げて    岩淵喜代子

野の土筆が長けて、その袴が太陽の光に焦げているのを目にした時、子離れを実感したという句です。子育てを体験した人にはこの回路はすぐにつながるでしょう。子供が小さかった頃は、春になると土筆を見つけては摘んだものでした。幼い子にも土筆は見つけやすく、あの可愛いらしい形は子供達に人気です。たくさん摘めた時は、子供といっしょに袴を取り、おひたしを作ったりしたものでした。
 べつに美味しいものとは思いませんが、土筆のおひたしにはそういった経緯も含めた格別な味があるのです。自分自身の子供時代も思い出されます。
 この土筆は、これから摘もうという心は動きません。食べるには伸びすぎ、日を経た土筆です。それより何より、摘む楽しみを分かち合う幼な子が、もうかたわらにはいないのです。母親が子離れを実感するのは、成人式とか卒業式といった特別な儀式の折ではなく、存外こんな日常のちょっとした時なのです。

吟行ー上野界隈ー

2010年12月18日 土曜日

第三土曜日は「ににん」の定例吟行日。今回は年末だしー、と渋っていたがやっと先頭立って仕切ってくれる仲間が手を挙げてくれて実行された。森鴎外の『雁」を意識しながら上野界隈を歩き回った。

「雁」の中に出てくる無縁坂の岩崎邸の反対側は、「坂の北側はけちな家が軒を並べていて」とあるように今も小さな家が並んでいる。反対側とのアンバランスも、昔から上野なんだ。
予約してあったイラリアンレストランのランチはパスタに肉か魚のメインデッシュが選べて、しかもサラダとデザートはバイキング。これで1250円は安い。

帰り路を辿りながらの駅までの途中に、いかにも卑猥な感じのポスターの貼ってある映画館を横目で見ながら、「こんな映画館もあるんだ」と言い合いながら路地を抜けきろうとしたときに、原作永井荷風『墨東綺譚」というチラシを配っているのが目についた。

そんな映画も始まるなんて知らなかった、と思いながら、一歩進めようとした足を後ろに戻して「一枚ください」というと、チラシを配っていた初老の男性が「記念にどうぞ」といった。私の前を歩いていた仲間の一人は、3歩ほど後戻りをして「私も」とチラシを受け取った。

チラシを開くこともせずに私は噴き出してしまった。男性の言う言葉に、直前に見た卑猥なポスターを思い出したのだ。仲間も多分そのチラシを見るまでもなく理解したのだ。二人でしばらく笑いが止まらなかった。

男性もまた、場違いなオバサン連が手を出してきて可笑しかっただろう。静かにな声で「記念にどうぞ」と手渡すも気転にも笑えた。手に握ったチラシを見るまでもない。「墨東綺譚」はさっきの映画館で次に上映される案内なのだ。

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