須川さんとはいつからのご縁だったか。どちらにしても、まだ「季刊芙蓉」は創刊されていなかったから、20年以上も前ということになる。率直な会話をする人はいくらでもいるが、その言葉使いがいかにも天真爛漫な「江戸っ子」を感じさせていた。句集のプロフィールを開いてみて、やっぱり江戸っ子だったと再認識した。『水菓子』は『栞ひも』『小鳥来る』に続く第三句集である。
花の蜜舐めてわたしも飛べさうに
哄笑すセイタカ泡立草の群
秋のこゑ鏡の奥にまた鏡
失敗の龍勢舁ぎ花野道
ドトールや煤逃げらしき冬帽子
小春日の大きな蠅を叩きけり
象の胴に象舎の影が秋の風
魔女の靴ずらりと春の飾り窓
マイクでも使ひゐるかに牛蛙
片蔭をはみ出してゆく犬の影
秋は夕暮ケータイから目を上げよ
室咲きやすべては明日考へやう
好みの句をあげてゆくと、ドゥーグル・J/リンズィー氏の言う(「生きること」について、さらりと、しかし深く追求している‥‥)という帯文に繋がるのである。