1971年オーストラリア生で海洋に関る研究者。それだけでも、俳句の視点に期待感が生まれる。
第二句集の特徴は、吾子俳句の加わったことである。
蔦の芽や嬰児自分の耳握る
嬰児の言葉は蝌蚪の群るる中
嬰児の首ぐいと立ち葱の花
また、海洋学者の生活が、おのずと俳句の世界を作る。
秋彼岸マンボウ二つすれ違ふ
鮟鱇の吊るされて影持ちにけり
八方に百八ぴきの法師蝉
道分かれまた分かれける鰯雲
以上の四句から次の四句の不思議さが生まれる。
足二本失せたる海星春寒き
エイの子が枕の中に試験前夜
歯が生える泣く子に蝉の羽化を見せ
銀漢にかかりし指紋拭きとりぬ