NHK深夜便の今日の花の一句は拙句「逢ひたくて螢袋に灯をともす」が放送された筈である。筈というのは、その時間は私にとっての一番の熟睡時間である。だから、この一句が放送される時間帯を一回も聞いたことがない。
だから冒頭の句が六月二十七日に放送されるという知らせを戴いても、最初から諦めていた。ところが、けっこう早朝型人間はいるものである。俳句に全く関係のない友人から、「聞きました」という電話がいくたびも入った。メカに強い人は、こうした放送を録音してあとで聞いているのだろう。
NHK深夜便http://radio.nhk-sc.or.jp/
ところで、この一句の解説は昨年の「俳句あるふぁ」4、5月号に以下のように書いた。
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逢ひたくて螢袋に灯をともす
ふと思い出したのが、湖を隔てて愛し合う男女の物語である。男が火を焚き、女がその火を頼りに、毎夜泳いで逢いに行く話。最後は男が飽きて火を焚かなくなったのである。なぜ、体力の無い女が泳いでいくのだろうと、女の私には不条理な話に思えて仕方がないのである。
螢袋はその名のとおりに袋状の花。垂れ下がった咲きようはランプシェードのようである。その連想から「ともる」ということばが生れた。そうは言っても虚構の火であることには違いないが、念じて眺めていれば点っているかのようにも見える花である。否、想いを凝らせば灯がともりそうな花である。
「螢袋に灯をともす」が出来ていから、初語「逢ひたくて」を見つけるのに数カ月を要した。この言葉を見つけたことで、ようやく「螢袋に灯をともす」のフレーズが生きたと思えたからである。
句集『螢袋に灯をともす』所収 平成2年
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じあんにとって、この句は、庭で蛍袋の咲いているころにゴルフ場で!亡くなった父親を偲ぶ句です。
作者としては、艶なところを詠まれたんだろうとおもうので、申し訳ないけど。
あの時の衝撃と後悔とが癒される、特効薬です。
このところ螢袋によく出会いますね。
案外身近な花だったのだなーと
あらためて認識しています。今年は、
この暑さと螢袋が一緒になって
思い出されそうです。
わたしも、聞きました。
この放送のある時間にはいつも起きているのですが、このコーナーが決まった時間ではなく、けっこうずれることもあるので、聞き逃したときは悔しい思いをします。
わたしにとって、句が声で読まれるというのがいいんです。
文字で読むのと違い、いろんな意味でおもしろいのです。
それにしても、一句ができあがるまでにそれほど時間がかかるということがあるのですねー。「逢いたくて」ということばが、こちらの文章の岩淵さんと比べるとロマンチック過ぎるような気がしますが、句としてみたときに、人々に親しまれ長く残る句ではないでしょうか。浅薄ながらしろうとの感想でございました。
ことばの力って、不思議な発展をすることがあるものだなーと
しみじみ感じる一句でした。